ブログ「イベントの企画案検討の話」で、このブログは若い人への応援も兼ねていることを書きました。その一環として「若い頃の話」というカテゴリーを追加し、若い人の参考になるかも知れない話も追加して行きたいと思います。
その第一段として北村三郎さんと言う人の話を書きます。歌手の北島三郎さんではありません。役者の北村三郎さんでもありません。だいぶん古い書籍ですが「なぜ会社は変われないのか(柴田 昌治著、日経ビジネス人文庫)」にイダテンのサブとして登場している方です。本に出て来る位ですから凄い人です。
北村さんはいすゞ自動車で風土改革に関わっておられました。その後経営コンサルタントとして独立されました。そしてひょんなきっかけで何度かお会いすることになりました。
北村さんからは大変たくさんのことを教わりました。その中で最も忘れらないエピソードについて紹介したいと思います。
出会ったのは私が35歳前後の頃でしょうか? 会社の風土改革に興味を持つくらいですから、私も結構血気盛んで、会社の中のあれこれに不満を抱いていた頃でした。
が、その割に、今一つ燃え上って来ない自分がいました。人と話す時は熱血漢に変わるのですが、一人に戻るとそれほどでもないと言うか、心のまん中に何か空虚なものがどかんと居座っているというか、そんな心持ちでした。
特に家に帰ると抜け殻状態。気分転換と称しては当時流行ってたテレビゲームに勤しみ、毎日明け方近くまで無駄に睡眠時間を削り、疲れた体を引きずりながら出社する。そんな毎日でした。
これではいけない。 いつもそう思っていました。 しかしどうしてもそんな負のルーチンから抜け出せず、悶々とした日々を送っていました。
北村さんにお会いしたのはそんな時です。 次から次へと出て来る含蓄のある言葉に心が掘り返され、いつの間にか質問していました。
「私はついつい怠惰な毎日を送ってしまうのですが、やる気ってどうやったら湧いてくるものなのでしょうか?」
風土改革の話をしていた時なので何とも場違いな質問をしたものだと思いますが、北村さんは即座にまじめに答えてくれました。
「君はフーテンの寅さんの良さがわからないだろう」
※フーテンの寅さんとは昔流行した「男はつらいよ」という映画の主人公の名前です。
「はぁ~?」と思いました。 まともに働かず、その日暮らしの生活で家族にたくさん心配や迷惑をかけていたフーテンの寅さん。 私が求める姿とは真逆です。 なので当然面白さはわかっていませんでした。 この映画の人気を不思議にさえ感じていたほどです。
それを見透かしたような北村さんのお言葉。 戸惑いました。 あのような生活の良さを理解しなさいということなのでしょうか?
「フッ、フーテンの寅さんですか・・・」 何とか口をついて出た言葉はそれでした。
すると次の言葉は「山田洋次の本は読んだことがある?」でした。当然答えはノーです。すると次は「山田洋次やフーテンの寅さんの良さが理解できるようになりなさい」でした。
その後、言われた通り、「男はつらいよ」を見たり、山田洋次さんの本を読んだりしてみました。しかしあまり(と言うか全く)共鳴できず、知らず知らずのうちにそのアドバイスから遠ざかっていきました。
しかし「君はフーテンの寅さんの良さがわからないだろう」という一言だけは、喉に刺さった魚の小骨の如くずっと気になっていました。
それが50歳を過ぎた頃でしょうか? ひょんなことから「あぁ、そういう事か!」と、あれやこれやが稲妻のようにつながり、自分の中での解にたどり着きました。
フーテンの寅さんの良さが分かった訳ではありません。しかし「フーテンの寅さんの良さがわからないだろう」とおっしゃった意味やモチベーションの源泉が何なのか、それが分かった感じです。
どういう事か、書き出すと大変長くなりますのでここでは書きません。
今回書きたいのは北村さんとのエピソードです。「モチベーションとはね」と丁寧に説明してくださっていたら、きっと私の記憶には残っていなかったと思います。
核心をズドンと突いておいて後は放置する。 素晴らしい指導者だと思います。
と言うことで、北村さんのようには行かないと思いますが、思いつくままにあれこれ書いていたら、見知らぬどなたかのお役に立てることもあるかな?と言う思いで「若い頃の話」というカテゴリーを追加することにしました。
北村さんへの恩返しというか、北村さんを始めとする諸先輩方から学んだことを後世に繋げていきたい、と言う気持ちもあります。
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