祖谷には粉ひき節という民謡が残っています。石臼で粉を挽く時に唄われていたものです。
昔女性は重労働でした。朝早く起きて大家族の食事や洗濯、片づけや掃除まで済ませて畑に出ます。一日中畑で働いて家に戻ったらまた家事。炊事・片づけ、洗濯物をたたんだり、繕いものをしたり。
やれやれ、これで終わりかと思いきや、そこからが本番です。石臼で粉を挽いて今後の食料の準備をします。
重労働の後の単純作業。当然眠くなります。その眠気を覚ますために唄ったのが粉ひき節だと言われています。
粉ひき節の歌詞は実に多様です。日常の出来事を思い思いの歌詞に乗せて唄ったためと言われています。特に、嫁姑の関係を歌ったものや淡い恋心を歌ったものが多い感じがします。例えば・・・
「嫁じゃ~、嫁じゃと~、嫁の~なしょ~~~たてな~よぉ~~。
かわい我が子も~、人の~嫁よ~、さぁ、よいよいよ~。」
何となく分かると思いますが、「なしょたてる」とは「あれこれ口うるさく言う」と言う意味です。
それ以上の解説は不要と思います。
この日はお嫁さんが一人で臼を回していたのでしょうか? 日常のうっ憤が大変短い歌詞の中に非常にうまく表現されていると思いませんか? 嫁入り後の日常生活や臼を回している時のお嫁さんの姿が目に浮かぶ感じがします。
「臼よ早よま~え~、はよ~もうて~~しまえ~よぉ~、
門に立つ人~ 待ち~かねるよう~、さぁ、よいよいよ~。」
嫁入り前のお嬢さんでしょうか? 逢引き(デート)の約束をしていたのに、粉を挽くように言われたのでしょう。 焦る乙女心がよく表現されているように思います。
※単にそば粉を受け取りに来た人に向けた唄かも知れませんが、それでは味気ないので、私は若いお嬢さんの姿を思い浮かべながら聴いています。
こんな感じで思い思いに唄いたい歌詞を曲に乗せて唄った祖谷の粉ひき節。よい歌詞やよい節回しが「それいいねぇ」と言う感じで周りにも伝わり、淘汰される形で今に残ったものと考えています。
そんな粉ひき節。つづき商店で食事をした際におねだりするときっと聞かせてもらえます。
また「祖谷の粉ひき節日本一大会」に来られたら、日本中から集まった歌自慢の「祖谷の粉ひき節」を聴くことができます。
すぐに聴きたいというせっかちな方はこちら。
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