冒頭の写真は落合と言う集落です。 東祖谷で2番目に大きい集落です。 なので民家がたくさん並んでいます。
では下の写真はいかがでしょう? こちらも落合集落です。 同じ落合集落でも雰囲気がだいぶん違います。 実際、生活様式もかなり違っています。

”祖谷街道ができて何が起こったか”で100年前に祖谷に幹線道路ができたことを述べました。
また”落合集落はどのように眺めればよいか(その1)”で昔の人は山の上側から住み始めたことを書きました。
そんな山の上の人々。幹線道路ができてその道沿いに引っ越す人が出始めます。特に、結婚等で新しく家を持つ人達は、間違いなく幹線沿いを選んだことでしょう。
これにより、集落には上場(うえじょう、うわじょう)と下場(したじょう)という区別が生まれます。祖谷ではどこの集落でも、この上場と下場が存在します。

さて、新しく下場に住み始めた人たち。当時流行りの商工業で生計を立てようとします。
例えば、私の生家は下場ですが、父は炭焼きから土建業・林業の従業員、母は和裁、洋裁、編み物、縫製工場などの自営業を転々としました。
これに対して上場の人たち。葉タバコと言う大きな収源源がありました。
”突然ですが、”うだつ”ってご存知ですか?”でも触れましたが、三好市には日本専売公社の支社があり、46年前の1979年(昭和54年)までタバコの刻み作業が行われていました。
少なくともこの頃まで、葉タバコは現金収入になっていたと言うことになります。私が20歳位までの話です。

子供たちの暮らしも上場と下場では異なります。
楽しい夏休み。下場の子供たちは毎日川で泳いでいました。友達とワァワァキャーキャー。休み明けは日焼けで真っ黒。”あぁ~楽しかった~!”と言う満足感に溢れています。
対して上場の子供たち。夏は葉タバコの収穫期。毎日汗まみれで働かされます。親と一緒にヒーヒーハーハー。こちらも休み明けは真っ黒でしたが、少し疲労気味。”あぁ~しんどかった”と言う顔をしています。
ということで、私は子供の頃、下場に生まれたことを大変幸運に思っておりました。

が、年を重ねると考えは変わるもの。 今は上場が大変うらやましい。
そもそも景色が全然違います。 朝起きて、戸を開け放つと、目の前に広がる美しい山々。 朝霧と静寂が更にその美を引き立てます。 早起きが楽しくなります。
上場は日当たりも良いです。 ポカポカ陽気の中、斜面で畑仕事。 聞こえるのは鍬の音と野鳥の声だけ。 大変満たされた気持ちになります。
夜は満天の星空。 月明かりが、山の稜線、畑、その周辺の木々の輪郭を浮かび上がらせます。 縁側から楽しんでいると、耳元を涼風が通り過ぎたりします。 たぶん、そんな感じです。 至福の時間です。
と言うことで、便利な暮らしを求めるなら町に住めばよいことですし、祖谷に住むなら上場がお奨めかと思います。 都会では決して味わえない暮らしです。
実際のところ、移住者の多くは上場を選ばれています。
※と、筆(?)の勢いで書いていますが、上場には、冬が厳しい、風が強い、道が狭い、など、大変なことも少なくありません。念のため、補足。
※それとこの記事では、”上場”、”下場”という漢字を用いていますが、この字でよいかどうかは不明です。調べましたが先行事例は見つかりませんでした。
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