大阪の中学生、集会所の水を復旧させる

水源地 祖谷の生活

最近の中学校や高校では修学旅行で農業体験をさせるようです。祖谷でもその受け入れをやっていて、私の家もその一つです。

来ているのは、春が関西の中学生、夏が関東の高校生。受け入れ人数はいずれも4人です。

私の家は農家じゃないので農業体験はできません。その代わりに集落の皆さんに喜んでもらえそうなことをやってもらっています。

初めて受け入れをやった時は、タイミングよく(?)集会所の水が止まってしまいました。

初雪が降ったので祖谷の冬の暮らしについて書いてみます”でも書きましたが、祖谷では自分の水は自分で管理する必要があります。

そして集会所の水は自治会長である私が管理しています。それを中学生にやってもらいました。

もちろん説明は行いました。祖谷での水道事情、どんな場合に水が来なくなるか、復旧に欠かせないエア抜きと言う考え方。

そして、集落の人が困っていること、それを助けるのが君たちのミッションであること、4人で力を合わせてミッションを遂行すること、と言う条件も付けました。少しドラマ仕立てにした訳です。

するとどうでしょう。盛り上がる、盛り上がる。

まずは車で水源近くまで移動したのですが、子供たちの気分は既に高揚気味。山の中を車で進むだけで「わぁわぁ、きゃーきゃー」。「えっ?えっ?、こんなところにあるんですか?」。期待と不安が入り混じったスットンキョーな声で聞いてきます。

そして、水源の入り口に辿り着くと弾かれるように車から飛び出します。「水源地はあっち」と指さすだけで先を争うように山道を登って行きました。完全に冒険心に火がついたようです。

まずは水源近くの第1タンクで水が来ていないことを確認します。そしてそこから谷沿いを上り、水源に連れて行きます。そして言いました。「あとはよろしく!」。

すると子供達は意外な行動に出ます。冷静に作戦会議を始めたのです。

「こんなところに来てみたかった」というリーダー格のS君が仕切ります。まず何から始めるべきか。わぁわぁ、きゃーきゃー。嫌がる子供は一人もおりません。みんな真剣に意見を出し合っています。

そして意見がまとまるとリーダー格のS君が役割分担を決めます。力自慢のK君にはホースを支えたり、抜き差ししたり、そんな仕事を任せます。

一番おとなしそうに見えたもう一人のS君には水の出口に回ってもらいます。作業中、水が出てきたらそれを伝える役です。

そしてもう一人積極的に意見を述べていたM君には参謀役を任せます。そしてリーダーと一緒に水源地に行き、二人で復旧作業を始めます。

途中1回だけ「ここにエアがたまってるんじゃないかなぁ?」とアドバイスしましたが、それ以外は全て子供たちの自力。30分程で水の復旧を成功させました。

最近の中学生はしっかりしてるなぁと感心していると、今度はカニ探しに没頭し始めます。どうやら作業中もカニの存在が気になっていたようです。ここでも彼らは、わぁわぁ、きゃーきゃー。一人取り残された私は微笑ましく、彼らの姿を眺めていました。

余程楽しかったのか、翌日帰阪する際、彼らは担任の先生を見つけると、真っ先に駆け寄り、「水道工事した~!」と叫んでいました。そして、どんな場所だったか、どういう風にやったのかなど夢中で報告していました。

「そうか、彼らにとってあれは水道工事だったんだ」と思いながら、再び一人取り残された私はその様子を微笑ましく眺めていました。そして今も昔も子供は同じなんだなぁとほのぼのとその光景を眺めていました。

巳年、藪、グラハム・ベル”でも書きましたが、私たちが子供の頃は喜々として藪の中を探検しました。祖谷には未開の自然ばかり。知らず知らず好奇心や冒険心が育まれます。ゲームやスマホ、塾など、人が作った環境で育つのとはかなり様子が変わります。

そのような都会の生活。これではいかんと思ったためか、体験型教育なる活動をしている人達がいます。修学旅行生の受け入れもその一つです。

私がやっているのは株式会社”教育体験企画”が主催しているものです。会社名”教育体験企画”から分かるように体験型教育そのものを目的とした会社です。その西阿波の窓口をそらの郷がやっています。私達はそらの郷から委託を受けて動いている訳です。

他にも、日本教育企画研究所など探せば色々出て来ると思います。

私は”体験型教育”は祖谷活性化に向けた重要なキーワードの一つと思っています。とりあえずは修学旅行生を受け入れながら、私自身も色々学び、どのように活性化に結び付けられるか考えていく予定です。

今年ももうすぐ春の受け入れが始まります。

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