祖谷には集落ごとに神社があります。氏神さんです。私の集落にもあります(当たり前ですが)。
その氏神さん。山の上に向かって30分ほど歩くのですが、ジオネタの宝庫です。
と言うことで、道中のジオネタを写真集で紹介したいと思います。

上の写真は祖谷でよく見る光景です。このように平たく剝離した石がよく落ちています。超平たいです。

これは山側の斜面です。青や赤で囲った部分を拡大した写真も載せています。こんな感じで山の斜面にも平たく剥離した石がたくさん落ちています。

青い枠で囲った部分。崖の一部が括れています。

更に拡大するとこんな感じです。茶色っぽい部分と紺色っぽい部分が綺麗に分かれています。
冒頭の2種類の平たい石の写真ももう一度見てみてください。色が違っています。茶色と青緑色です。

紺色っぽい岩は拡大するとこんな感じです。大変綺麗です。薄く剝がれやすそうでもあります。

ここはまた違う場所ですが、やはり筋がたくさん入っています。

時間が経って酸化すると違う色になるのでしょうか? 同じように筋が見えますが、色はだいぶん違います。

こんな場所もあります。ここは筋が水平です。
ここで少し筋の正体を解説します。実は筋は海底に堆積した泥の歴史を示しています。

泥は水平に堆積するので時代の違いが上記写真のように水平な筋として記録されます。一筋辺りたぶん千年とか万年とかかなり長い年月の堆積物だと聞いています(何年だったかは覚えていません。また勉強しておきます)。
それが海底地下深くまで引きずり込まれ、高温高圧化で結晶化した後、隆起して地表に現れます。

隆起する際、まっすぐは上がってきません。例えば、左右からも圧力を受け、上が凸の上の写真のような形でせりあがります。そして中央部が水平、その周辺が斜めの筋となります。
山はこのように両方から押し合いっこしており、圧の弱い側が押し込まれます。

上の写真をご覧ください。道路が崩れそうになっているのがわかります。圧の弱い側が押し込まれ、崩れそうになっています。これは岩石の縞模様の向きと一致しています。

地すべり対策した部分も同様です。圧の弱い側に向かって崩れそうになっています。

ここも同じ方向に道がへこんでいます。

まだ新しいお墓ですが、同じ方向に割れかけています(つなぎ目に隙間ができている)。
たぶん、南海トラフの大地震が来たら、この方向に大きな地すべりが発生します。
幸い、この方向に民家はありませんが、祖谷ではこのように自然現象を観察し、想像力を働かせて生活することが被災防止につながります。

ちなみに上のような写真の石も見つけました。縦に割れています。

上の写真も縦に割れています。縦に割れるのも隆起の際に力が加わったことが原因です。
2枚目のスポンジの写真を再度ご覧ください。これがどら焼きやパンケーキだったとしたら、縦にぱっくり割れます。
曲げる度合いを緩くすると、どら焼きやパンケーキは割れません。割れませんが、内部に見えないダメージが残ります。ダメージの方向は縦です。
そして、長い年月を経て風化すると、ダメージが残っている方向に割れます。
風化とは、寒暖差によって膨張や伸縮を繰り返すとか、中にたまった水が氷になってダメージ部分を押し広げるとか、そのような作用を言います。

上記写真がよい例です。弱い部分、すなわち筋と縦ダメージの部分が割れています。自重に耐えられなくなったら落ちるでしょう。
するとその上部の石は下の支えを失います。自分の重みを自分だけで支えないといけなくなるのです。
すると、強度の弱い部分が開き始め、限界が来ると落下します。
こういう性質を持つ石は、地すべりではなくて、崩落を引き起こします。このような形で岩が割れ落ちる場所では崖はいつまで経っても崖のまま維持されます。
祖谷は地すべりを引き起こす岩盤と、崩落を引き起こす岩盤の2種類でできています。
”もう一人のK君の話:あの黒い岩って何ですか?”でも書きましたが、地すべり跡には集落ができます。コエグロのある祖谷独特の風景美は地すべりが作ったと言っても過言ではありません。
また”栗寄の大カーブ(紅葉編):ここから龍宮まで紅葉をお楽しみください”でも書きましたが、崩落を引き起こす岩盤層には自然がたくさん残っています。当然そこは深い渓谷になっています。自然林と渓谷が作り出す祖谷独特の景観美は崩落によって作り出されている訳です。
そしてこのように祖谷を形作る2種類の岩石。ちょっと注意して観察すると、あっちこっちで観ることが出来ます。ただしジオの知識がちょっと必要です。
ここは三好ジオパーク。ジオがわかれば楽しさも倍増です。興味ある方は是非下記サイトを訪問し、ジオについて学んでください。
三好ジオパーク公式サイト|動く大地が創った、空へとつづく集落と吉野川の流れ
本サイトでは講演・研修情報も掲載しています。ジオに関しては、”プチガイド養成講座”、”暮らし方カレッジ”、がお奨めです。是非定期的にこちらをウォッチください。
本Webサイトの検索欄に”ジオ”と入力していただいてもジオネタがそこそこ出てくると思います。
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