ツアーガイドからすると阿佐家住宅はネタの宝庫なのですが、それは知識があってのこと。事前知識なく訪れてもただの大きな屋敷にしか見えません(たぶん)。
遠路はるばる訪れたのに「あぁ、こんな感じね」で終わり、家に戻られたら記憶にすら残らない。。。 それでは非常に残念なので、どこを見たらよいか、ベーシックな部分を記載してみたいと思います。
阿佐家って何?という方もいらっしゃるかも。そういう方はまず”祖谷における平家の落人伝説をまとめておきます”をご参照ください。

阿佐家までのルートはナビをセットすれば大丈夫なので、到着後の話を記載します。
上記看板が出てきたら、奥の駐車場に車を置き、右下に降りる道をお進みください。すぐに道が二股に分かれます。そこを右に進めば、あとは道なりで阿佐家住宅に到着します。

途中、このような光景が目に入ると思います。この景色をどう見たらよいかについては”平家屋敷阿佐家はなぜ阿佐を名乗っているか”を読んでみてください。
祖谷の主な観光サイトは阿佐家を除いて全てが祖谷川沿いに存在します。
しかし阿佐家は違います。祖谷川の支流の谷道川。その更に支流の名もない谷の、そこから更に支流となる谷川を分け入った所にあります。
それほど深い山に入って来たのに大変見通しが効く場所に建っています。 まずはそのことをしっかりと認識して欲しく思います。ありえない景色です。
となると、ここを発見するまでにどんなに苦労したことだろうか?とか、どういうことに拘ってここにしたのだろうか?とか、普通の人ならあれこれ考えることでしょう(と勝手に思っています)。
まずはこの場所に立ち、この景色を見て、そういう思考を巡らせてください。
私はこれを阿佐家に踏み入れるための儀式だと考えています。この場所で、この景色を見ながらしっかりと落人の気持ちと同化できれば合格。きっと阿佐家住宅の本質が堪能できることでしょう。
ここはそんな場所。と思っているのですが、それは私の勝手な思い込み。お気になさらず次にお進みください。

それで更に進むと屋敷が見えてきます。ここでは屋敷の造りを入念に観察してください。詳細は”入母屋造り”で書いた通りです。祖谷では群を抜いて貴重な造りなのです。

次は式台玄関にご注目ください。水引虹梁というのでしょうか? 水引模様が入った梁のようなものが見えます。
実はこの阿佐家住宅。つい最近まで平家の末裔がお住まいでした。そして13年前に市に譲渡されましたが、それまでに代々の末裔殿が住みやすいように家の形を変えていました。
市は譲渡を受けるに当たり、建築された当初の形に戻そうと専門家を集めました。
その際に、当時の武家屋敷には式台玄関があったはずだと言う話になり、古い屋敷を解体したところ、軒下から出てきたのが上記写真の水引虹梁と言う訳です。
「やはり!」と言うことで式台玄関が再現されたのですが、水引虹梁はかなり虫に食われていました。そこで虫食い部分が修復されて現在に至っています。虹梁の色が2種類に分かれているのはこのような理由によります。

次に室内に入って頂きたいのですが、その前に上がり框を見てください。大変広くなっています。その理由を知りたい方は”平家屋敷阿佐家は上がり框ですら楽しめる”をお読みください。

それと、もう一つ、上がり框の下もご覧ください。平家屋敷が石の上に建っていることがわかります。それは石場建てと言って昔の建物ではよくあります。
しかし平家屋敷は石の形に合わせて木が整形されています。ぐるり周囲、全てです。結構、感動的です。是非つぶさにご覧ください。

いよいよ中に入ります。まずは間取りを見てください。入って奥が上座敷、手前が下座敷になっています。
上座敷には家主が、下座敷には重臣が座り、我々のような平民は庭にゴザを敷いて座ったのでしょうか? そんなことを想像する間取りになっています。ここら一帯を統治した武家屋敷ならではの間取りです。

次に入って右側の部屋をご覧ください。上段の間と呼ばれ、客間になっています。上記写真は客間から庭を写したものです。上段の間はこのようにお客様に庭を楽しんでもらえるように配置しているそうです。
この庭がかなり価値のある庭なのだそうですが、まだ勉強中にて詳細はまた別途記載させていただきます。

ここは回廊です。武家屋敷には外と内の境に必ず回廊があります。弓矢を防ぐためとか、敵を迎え撃つためとか聞いています。真偽の程はまだ未確認です。

ここは囲炉裏です。囲炉裏は色んな観光サイトで見ることができます。が、ここは囲炉裏の内部が確認できます。こんなに深かったんだ、と言うことが分かります。

阿佐家では天井もご覧ください。白川郷などは天井に板が張られ、農機具が置かれています。しかし祖谷の古民家はこのように吹き抜けになっています。
理由はタバコの葉を干すためです。阿佐家が葉タバコを栽培していたかどうかは未確認ですが、葉タバコの栽培が盛んだった祖谷では、天井を吹き抜けにするのが当たり前だったのかも知れません。

家の中を一通り見終わったら式台玄関に戻り、是非階段に腰を掛けてください。前に赤松が見えます。何代目かが観賞用に植えたのだろう、と23代目当主がおっしゃっていました。是非ご鑑賞してください。
その際、隣のノートが置いてあると思うので、是非記帳もお願いします。

そして最後です。紫の泉をお楽しみください。帰り道にあります。屋敷の庭を出て側溝沿いに右に進んでください。ここの詳しい話は”紫の泉”を参照ください。
以上、阿佐家住宅の楽しみ方を紹介しました。 写真だけ眺めても、魅力的なところだと分かって頂けると思います。
文章をしっかり読んでいただいた方は説明不足でストレスを感じられたかも知れません。説明を省いたスポットも色々あります。
もっと深く知りたい人は是非ガイドをお申込みください。よびごと案内人というガイド団体が案内してくれます。こちらのページのまん中辺りにその紹介が載っています。
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