下記動画をご覧頂けるでしょうか?雪が下から降っているのが分かりますか?
こんな感じで祖谷では雪は下から降ります。厳密には、上から降って来た雪が渓谷で舞い上がり、下から吹き上げて来るのです。
風も同じです。下から吹き上げてきます。吹き上げて来る風は家の屋根を下から持ち上げます。これによって私の家の屋根が吹き飛ばされたことがあります。
あれは私がまだ6歳の頃。昭和39年台風20号です。今でも鮮明に覚えています。
※同台風は最大瞬間風速72.3m/sで今でもワースト7位を維持する凄いやつです。
その日は祖父母が泊まりに来ていました。「私の家は秘密基地?」でも書きましたが、当時の家も1階部分が地下に位置し、出入口は2階にありました。そして、私と妹は、その日は祖父母と一緒に1階、すなわち地下にある部屋で寝ていました。
そこから被害に遭うまでの経緯は全く記憶にありませんが、祖父に背負われて階段を上っている場面からは鮮明に覚えています。妹は祖母に背負われていたのではないかと思います。
背負われていただけの私は、自由に動く顔と目玉をフル稼働させて、周囲の様子を観察していました。
そこに危機意識や当事者意識はゼロ。ものすごいアトラクションを間近で観劇しているような特別感と興奮しかありませんでした。
階段を上り切った辺りだったと思います。目の前の柱が大きく撓みました。「こんなに曲がっても折れないだ!」と思うほど撓みました。
そして撓みが戻った瞬間、バーンという音をたてて天井のべニア板が数枚飛んで行きました。
「おぉ~!」と思いました。興奮冷めやらぬ私は。その場を通り過ぎても、首を精一杯捻り、名残惜しくその場を見ていました。
そうしているうちに、出口への通路の横の壁が落ち、祖父はそこを抜けて外に出ました。特等席からのアトラクション観劇が突然終わりました。

しかし、興奮はまだ続きます。
その後は、道路を挟んだ隣の家に避難させてもらいました。私たち兄弟は2階の部屋に通され、ここで寝ているように言われましたが、雷が凄くて、ずっと寝ないで眺めていました。
大音響の雷鳴が轟くたびに山の全景が一瞬浮かび上がって消えます。その際見えた山の輪郭は、まるで青白いインクをまき散らしたような何とも言えない美しさだった記憶があります。
私はまるで視野検査を受けているかのように、どこで光っても見逃さないぞ!的な位置に目玉を持ってきて、全集中で雷を待っていました。
光った後に雷鳴が轟くことや、光る場所によって光と雷鳴の時間差が変化することもその時に知りました。
この日に限っては「早く寝なさい」と言われなかったこともありましたが、興奮冷めやらぬ私は、6歳と言う年齢にも関わらず、まったく眠気に襲われることなく、明け方までひたすら雷を追いかけていました。
その日は私が家を無くした日。にも拘わらず私は初めて体験する自然現象に心を奪われっぱなしでした。子供とは呑気なものですね~。
今季はよく雪が降ります。その度に下から吹き上げて来る雪が「あの話を書け」と訴えかけて来るので、今は冬ですが、夏の台風体験について書いてみました。
ちなみに、家を無くした私たちは伯父の家の空き家を借り、新しい家(現在の家)が建つまでそこで暮らしました。
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