祖谷を含む西阿波全体の外国人宿泊者数は2007年に950人程度だったものが、2019年には32,000人と30倍以上の伸びを示しています。
※その後コロナで激減しましたが、現在はほぼ同数まで回復しています。
このような背景から最近では祖谷がインバウンドの研究対象になることも少なくありません。
例えば12月にはMラボRadioで西阿波ツーリズムに貢献された出尾さんの講演がありましたし、
【12/20開催】観光地域づくりとインバウン… | MATCHAラボ
1月には右ポスター記載の勉強会で祖谷在住の四宮さんが講師を務められます。

実はかく言う私も、12月に行われた某大学大学院の社会人向けインバウンド講座にZoomでゲスト参加させて頂きました。ケーススタディとして祖谷が取り上げられたためです。
先生の方から祖谷に関する全体像やインバウンドの実態が紹介され、その成功要因や課題などを学生さんに考えてもらう内容でした。
大変示唆に富む内容で、考えさせられることがたくさんありましたが、特に、立場の違いによる考え方の違いについて大きな気づきがありました。
都会と田舎の両方の生活を経験している私は、そのどちらも理解できており、中立の立場でモノを考えられると自負しておりました。しかし実はそうではなかったと言うことです。
気づきのキーワードは「オーバーツーリズム(過多な来訪者による観光公害)」と「サステナビリティ(持続可能性)」でした。

まずオーバーツーリズム。先生が「地元の人も観光客もWinWinになる解決策を考えるべき」とおっしゃいました。
ハッとしました。そうか、観光客も不快な思いをしているんだ!
オーバーツーリズムに関する報道はどれも観光客が悪者。如何に地元民が迷惑を被っているかという視点で報道されているように思います。
また、祖谷はまだオーバーツーリズムという程ではありませんが、それでも非常識な行動をとられる観光客は時々おられるようです。それによって不快な思いをしている地元民の話は何度か耳にしています。
これら経験から「オーバーツーリズム=地元民が被害者」という視点でしか捉えていませんでした。しかし迷惑しているのは観光客も同じ。
遠くから遥々楽しみに来たのに大きな混雑。地元民からは煙たがられ、時に高圧的な指示や指導を受ける。マナーを守るお客様もたくさんいらっしゃると思いますが、オーバーツーリズムの名のもとに十把一絡げで片づけられます。
しかし先生は違いました。観光客自体も不快な思いをしているのだとおっしゃいます。確かにその通り。何と一方的に物事を考えていたのだろうと反省しました。

もう一つは逆の視点。祖谷がサステナブルであるための条件は何かと先生が尋ねられました。
「もっとアクセスをよくする」、「もっと宿泊施設を増やす」。そのような回答が学生さんから返ってきました。違和感を覚えました。ここは明日をも知れない限界集落。
観光客が評価してくれているこの美しい景観は人が住んでいてこそです。日常的に村人が清掃をし、草刈りをし、建築物の手入れもしています。年に2回はみんな総出で公道の草刈りもします。
国や県、市が交通網を整備してくれるのも、大手企業が電力網や通信網を供給してくれるのも、住民がいるからにほかなりません。
例えば落合集落。手入れせずに放置すると雑木だらけの単なる山に変わります。町からの通いで景観維持に努める方法もありますが、少し範囲が広すぎます。まずコスト的に見合いません。
と言うことで、サステナブルであろうとするとき、我々地元民が真っ先に考えるのは止血です。すなわち必要最小限の住民数を確保・維持することです。
サステナビリティについての意見交換が終わった後もこのようなことを考えていた私は、コメントを求められた際、ついこの話に戻ってしまいます。
あぁ~、場違い。でも時すでに遅し。しかし言わずにはおれない。内部の実態を知って欲しかった。
そういえば会社勤めしていた時、ビジネスでは外部分析と内部分析の両方をしっかりとやるように教わりました。
オーバーツーリズムとサステナビリティに関する2つのエピソードはまさにそういうことかな?と思います。
私は既に内部の人。ついつい内なる視点で物事を考えるようになっているようです。外部の人との交流が重要なことを改めて知りました。
が、それは外部の人も同じ。観光ビジネスや地方創生を考える際は内部の実情把握が大変重要です。
と言うことで、そのようなお仕事に就かれている皆様。内部分析が必要な際はコンタクト頂けると可能な限り支援させて頂きたいと思います。とりあえずお気軽にコンタクト頂ければ幸いです。
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