かずら橋はシラクチカズラという蔓性植物でできています。シラクチカズラは標高の高い山奥に自生していて、祖谷にもたくさん生えています。
蔓性植物と言うと皆さん、どういうものを思い浮かべますか?
例えばアサガオ。例えばブドウ。例えばキュウリ。木や支柱になるものに巻きついて伸びていきます。
しかし、かずら橋の材料となる蔓がこんなタイプだと大変ですよね? まず山から穫って来るのが大変です。 巻きついている蔓を解かないと穫れません。
頑張って獲ったとしても、その後がまた大変。グルグル、クネクネした蔓をまっすぐに伸ばさないといけません。これは多分無理。まっすぐにはならないし、無理に伸ばすと切れたり折れたりします。少なくともダメージが入り、橋に使える程の強度が保てなくなります。
次に思いつく蔓のタイプとして根を張りながら這い上がっていくタイプ。蔦がこれに当たるかと思います。
しかし、このタイプも大変です。まず剝がすのが大変。乱暴にやると傷んでしまうし、丁寧にやると手間がかかる。穫った後の根の処理にも大変な労力を費やします。
では、シラクチカズラとはどんなタイプのかずらでしょう?
実は、木に巻きついたり、しがみついたりはしません。 「私は木です」という感じで、本当に木のように独り立ちして伸びていきます。
枝も出しません。葉も出しません。幹一つでひたすら上に向かって伸びていきます(下の写真は少し曲がってます。「ん?これはまっすぐじゃないぞぉ?」と途中で気が付いたのでしょうか?)。

そして高い木の枝にぶつかります。するとおもむろに枝を伸ばし、高い木の枝に絡みつきます。そしてそこで葉を広げます。冒頭の写真の通りです。
賢いですね~。 陽が届きにくい森林の中。 中途半端な位置で葉を広げても光合成はできません。
そのことを知ってか知らずかシラクチカズラ。 辛抱に辛抱を重ね、宿主となる枝にたどり着くまで決して枝も葉も出しません。5mでも、10mでも、20mでも伸びていきます。 倒れもしません。
なので収穫は容易です。上と下をカットするだけです。
丈夫でもあります。そもそも10mも20mも独り立ちできる位ですし。
しかも蔓なので中がスカスカしてて軽いです。切断も運搬も容易です。
火であぶったり、蒸気で蒸すと、柔らかくなります。 かずら同士を巻き付けることも可能です。
かずら橋になるために生まれてきたような蔓ですね。
祖谷への観光でかずら橋をお渡りになる際は、シラクチカズラ自体にも興味を持って見てみると面白いかもしれません。枝葉を切ったり削ったりした痕跡など全くありません。
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