立会人は秋の虫?:祖谷の選挙の話

秋の虫 祖谷の生活

明日は参院選の投票日なので祖谷の選挙事情についても書いてみたいと思います。

私が若いころの祖谷は、選挙と言えば、それは大変な力の入れようでした。

選挙カーの後ろに鈴なりになって応援者の車がついて走り、その車の台数で勢力の大きさをアピールしていました。

応援者は個別に家庭を訪問して票の獲得にも努めていましたし、そのあとはその家庭の票が相手方にとられないように見張りが立ったりもしていました。

当然見張りは夜中もというか、夜中こそ重要になるので、集合住宅など票数の多い所では、かがり火を焚いて、交代制で見張りがついていました。

当然相手方と一触即発になる場合もあり、そんな時は気を大きくするためにコップ酒を煽って応援に駆けつけていたりしていました。

ずっと祖谷を離れていた私は、選挙にも無縁だったのですが、私の伯父が村長選に立候補した時に応援に戻って来たことがあります。上記はその時の経験談です。

私はこれまでの人生の中で、1週間を10時間未満の睡眠で過ごしたことが3回ありますが、この時がその1回目でした。

選挙活動が終わるとすぐに家に帰って爆睡しましたが、やはり選挙の結果は気になっていたのか、夕方、村のスピーカーから選挙結果が流れてきた時は意識が戻りました。

そして僅差で敗れたことを知り、落胆のうちに再び深い眠りに落ちていったことを記憶しています。

集落の投票所

(私の集落の選挙投票所)

最近は祖谷も近代化され、そのような生臭い選挙はなくなった感じがします。どちらかというと都会よりも呑気かも知れません。
※私が知らないだけかも知れません。

そして高齢化に苦しむ祖谷では、私のようなUターン間もない者でも選挙の立会人に指名されたりします。

あれは昨年だったでしょうか。衆議院選で初めての立会人を経験しました。投票所の開閉、投票の準備、投票用紙の投函など、投票に関するすべてに立ち会い、不正が行われていないことを確認する役割のものです。

送られてきた”投票立ち合い人の手引き”を見ると、”用便その他真に止むを得ない場合を除いては、席を立たないこと”とか、”ひとたび承諾して立会人となった以上は、その公益代表として職責上、病気等の正当な理由がない限りは辞職することができない”など、大変重たそうなことが書かれています。

対応時間は朝の7時から夕方の6時。11時間もの間、重々しい雰囲気で、私語も慎み、長い一日になりそうだなぁと憂鬱でした。

するとどうでしょう? もう一人の立会人は私の同級生で呑んべぇのKM君。 大変リラックスした感じで対応します(差し障りがあるかも知れないので具体的には述べません)。

しかも祖谷の人口は最盛期の1/10。投票者はポツリポツリとしか来ません。8割以上が誰も来ない関係者だけの時間です。当然雑談も増えます。

一番の雑談ネタは次に誰が来るか? です。

皆さん、選挙立ち合いを何度も経験しているベテランばかり。何時くらいに誰が来るか、大体予想がつくようです。

というよりも、もはや予言。「XX時までに△△さんが来るよ」。「ほら来た」。そんな会話が繰り返されます。

彼らは投票時間だけでなく、どんな乗り物で来るかまで言い当てます。「軽トラで来るはず」とか、「カブ(という昔流行ったバイク)で来る」とか、「□□さんに乗せてもらってくる」とか。

なので、エンジン音がするたびにみんなシンと静まり返ります。神経を入口に集中させ、”予言の的中”を固唾を飲んで見守ります。

ある人が「次は〇〇さん」と言うと、「いやいや、〇〇さんは病院に入院してる」などと言う展開もあります。するとそのあとは〇〇さんの病状について情報交換が始まります。

一度そんな話が出ると話題はあらぬ方向に広がります。

「そういえばXXさんを最近見ないけどどうしたんだろう」とか、「〇〇さんも同じ病気を患った」とか。

高齢者ばかりにて病気ネタは無尽蔵。盛り上がる、盛り上がる。が、車のエンジンの音がするとピタッと会話が止まります。

秋の虫のようです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました